奥多摩を歩いた話
花粉のシーズンは家に閉じこもりきりだったのでそろそろどこかに出かけてみようかと思っていた。
本当は海に行きたいけどお金がないから遠出はできない。とにかく大きい水が見たいので、上京して間もない頃に一度だけ行った奥多摩湖にもう一度行ってみようかなと思った。
なんだか気分が乗らなくて朝も家でうだうだしていたら9時過ぎになってしまったけど、まあ大きい水を見て夕方くらいまでぼーっとしていよう、みたいな気持ちだった。
それとよい木陰でもあったら読書をしようかななどと考え、文庫本を2冊も荷物に入れていた。結果的に本を読むようなことは一度もなく、一日中背中が重かっただけだった。
奥多摩の方に行くと周囲に迫った山に圧倒される。
実家がど田舎だから山なんか決してめずらしいわけじゃないのに、どうしてこんなに「おお〜」となるのかなといつも疑問なんだけど、地元は車社会だから電車でこういう山のそばまで行けることが新鮮なのかな。よくわからない。
奥多摩湖に向かおうと決めていたはずなのに、奥多摩駅に着いた頃にはなぜかほぼリセット状態になっていて、観光案内所で「どちらへ行かれますか?」と聞かれた私は「何も決めてないんですけどどこがおすすめですか?」と口走っていた。思いつきで行動したくなるいつもの感じが出てしまった。
初めて来たわけじゃないことを伝えそびれてしまい「初めてなら奥多摩湖がおすすめですね」みたいな感じだったんだけど、私が女ひとりだったからか案内のお姉さんは気を利かせてくれて周辺のおしゃれなカフェ情報を中心に推してくれて話があまり頭に入ってこなくて申し訳なかった。ファストフード以外の店にひとりで入れないんです。
奥多摩湖も鍾乳洞も氷川渓谷もすでに行ったことがあったので、まだ一度も行ったことがないあたりにひかれ、「大多摩ウォーキングトレイル」というマップを手に取った。お姉さんによればこちらも良いルートとのこと。そしてまた新しくできたおしゃれカフェ情報をくれた。
観光案内所を出ると、水辺でのんびり計画がガラガラと音を立てて崩れるのを感じながら、逆らえない衝動により私は歩き出していた。
体調も良いとはいえない感じだったんだけど、もらったマップに8.3km約3時間とあったので気楽に考えていた。
駅にも、駅前にもコンビニらしき店はなく、食べ物を何も持っていなかったので、駅前の個人商店でパンを買った。
電車旅してると駅の売店もコンビニもなくて個人商店で買い物することがたまにあるけど毎回緊張してしまう。
一見怖そうなお店のおじさんは口調もぶっきらぼうだったけど「そこにパンフレットあるよ」「鍾乳洞行くなら割引券もついてるよ」とか教えてくれて親切だった。
お店を出てから隣にもうちょっとオープンな感じのスーパーがあったことに気づいた。
駅からしばらくは普通のいなか町の道を歩いた。ウグイスが鳴いてるのを久しぶりに聞いた気がする。道を歩いているのは私以外誰一人いない。
さて、本題なんだけれども、今回もらったマップとコース、ところどころ非常にわかりにくく、何度も道を間違えてしまった。私の方向音痴とか注意力散漫もかなり問題ではあると思うんだけど。
これまでひとり旅の途中どうしたらいいかわからなくなってしまった時、検索して出てきた見知らぬ誰かのブログに救われたことが何度かあるので、私も今回の困ったポイントを書き残すことでいつか誰かの役に立てたらと歩きながら思っていた。検索で引っかかるかわかりませんけど…
困ってる人はこんなダラダラ長いブログ読まないだろうしな。
大多摩ウォーキングトレイル、コースは電車で通ってきたルートを戻る形で、奥多摩〜白丸、白丸〜鳩ノ巣、鳩ノ巣〜古里の3つが続いている。しんどくなったら途中で電車で帰れるな、という安心感もあった。
天気もいいし新緑もいい感じだ。
奥多摩駅からしばらく普通の道をまっすぐ歩いて数馬峡遊歩道に入るのだけど、まずそこがわからない。階段を降りた先は発電所になっていて、道なりに歩いたら元の道に戻ってしまう。
青梅街道の方まで歩いて行ったりかなりうろうろしたけど、もう一度戻ってよくよく見たら発電所の横に遊歩道に降りる道があるではないか!
しかしこれは難易度が高い…
案内板出てるじゃないかと思われるでしょうが、これは逆方向から戻ってきた時の視界であって、道なりに歩いていると見えないのです。
ゲームでいったら隠し通路扱いでしょこれは。
ほっとしたのもつかの間、すぐにどうしたらいいかわからない場所に出る。
川の方向に向かう道、これはどちらが正解でしょうか?
答えは…どっちも間違い!
画像にはないけどこの右手の人んちかな? という階段を登るルートが正解です。厳しい。
あとはしばらくまっすぐですのでご安心を。
この道、ずーっと石垣が続いていた。
ホラー好きにぐっとくるトンネルもあった。
奥にぼんやり出口が見えてるところが特に良かったんだけどただの真っ黒に写ってしまって、なんとか調整して出口が見える明るさにしたけど実際見た感じにはならないな。
遊歩道は木々に視界を遮られていたけど、時々隙間からすごい色の水が見えた。
遊歩道から白丸駅に出る数馬峡橋でようやく視界が開けて、すごい色の水の全体像を見た。
カヌーの人たちがたくさんいて気持ち良さそうだった。
あと今書いてて思ったけどこれが「峡」なんだな。なるほど。
ここからは白丸湖畔遊歩道。
木立の隙間からすごい色の水とカヌーが見える光景が続く。
白丸ダムが見えてきた。
自然の中の人工物、好きです。
高所恐怖症、治ったと思ってたけどちょっと「ウッ」となってしまった。
鳩ノ巣渓谷はそこまでの風景とまた違った感じになった。
植物も印象的だったな。
さてさて、鳩ノ巣駅周辺がまた大変な難しさだった。
写真は撮っていないけど、喫茶店の入り口かな? 廃旅館の敷地かな? ここは部外者が入ってはいけないスペースだよね? と思った場所が正解ルートです。突き進んでください。
このあたりどれだけぐるぐる歩き回ったことか…
かなりきつい上り坂を上った後で間違いに気づくパターンばかりで体力の消耗が激しい。
ここすんなり進める人いるのかな…
マップにある双竜の滝というのを見たかったんだけどこんなだった。
別ルートがあったのかどうかはわからない。
水神の滝は見た。
もしかしたらここで中断して鳩ノ巣駅へ向かったほうがよかったかもね…
しかし先へ進んでしまいました。
雲仙橋。
ホラー映画の入ってはいけない集落へようこそ的な雰囲気!
何の情報もなくこの地図だけ見ながら歩いていたんだけど、スタートからずっと続いてるこのラインがいきなり山道に入っていくとは思わなかったんだ…
でも今になって見ると「展望台」とか「尾根」とか一応ヒントは出てたんだね。
引き返すのも何なので突き進みましたけどね。
展望台からの眺め。
ここにもひっかけがあって、展望台の前に続いている道を上っていくと不正解です。車道に出てしまいます。出ました。
正解は展望台の裏。気づくかよ。
本当に山だし、いい天気なのに誰ひとり歩いてないし、道も本当に合ってるのか確信が持てないし、怖すぎて山をほとんど駆け下りてしまった。普段運動してなくても恐怖に駆られてめちゃめちゃ軽快だった。私は忍者か、という走りだったと思う。
その後足腰のダメージは深刻だった。
山を下りきった場所にあった沢はとてもよかった。
しばらく人間をまったく見ていなかったので、沢を眺めているおじさんが一人いたのも良かった。
こういう場所、明らかに周囲の空気と違った何かを感じるんだけど、マイナスイオンは科学的根拠がないらしいのでこれは何なんだろう。湿気?
誰もいないし(おじさんは去った)空気もいいし、ここはずっといたいくらいだった。
その先もまあまあ厳しい道もあったけどあとは生活道路に出て古里駅まで歩いた。
道を整備したりしてくれる人たちのおかげで私のような者でもハイキング的なことを楽しめるのはわかっているので大変ありがたいと思いつつ、あちこちちょっとなんとかしてくれたら、っていうのがあったな。
というかこのマップにちょっと書き添えればいいだけという気もする。
最高とまではいかないけどまあ楽しかったし、歩きながらこれ明日も来てもいいなとか思ってました。
終わりです。