関西の旅 10

最終日。

 

前日、もう十分琵琶湖は眺め尽くしたと思っていたけど、東京に戻ることを考えると寂しくなって朝の琵琶湖に別れを告げに行った。

公園のように整備された浜ではなく大きい道沿からちょっと下った、座るところもないような浜で、流木に腰を下ろしてしばらく琵琶湖を眺めた。

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朝の水辺は幻想的だ。

近くに住んでいる人はこれが日常の光景なんだなあと思うと不思議な感じがする。

 

帰りがけどこかに寄るかまっすぐ帰るかは決めていなかったんだけど、疲れ果ててはいたものの、貧乏性の私は次いつこっちまで来られるかわからないんだぞ、と思うともったいなくて、じわじわ体力がわいてくるのだった。

もしどこかに寄るとして、位置的にも今回の旅の流れ的にも、関ケ原以外考えられなかった。

あ、「関西の旅」ってタイトルなのに関ケ原は…まあいいか。

 

歴史好きたちがたくさん降り立つ関ヶ原駅、充実した戦国時代関係のパンフレット類の中にちゃんと一部ありましたよ、「壬申の乱 史跡めぐり」が!

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壬申の乱、このあたりが舞台だったのがわりと意外だった。奈良やその周辺かと思った。

史跡はわりと広範囲に散っており、車もなく疲れ果てた脚での移動となるため、あまり無理はしないようにしようと決め、一つのエリアに絞って歩くことにした。

この日街を訪れている歴史好きたちの中に壬申の乱めぐりをしている人はいなさそうだったけど、ところどころルートがかぶっていて、関ヶ原の戦いめぐりの人たちとすれ違ったりした。

 

道なりに、まず「兜掛石」「沓脱石」。

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大海人皇子が兜を外してかけた石と、沓を脱いだ時足をかけた石とのこと。

いや…それを今までこうして残しているというのは本当にすごいことだとは思うんですよ。

それにしてもこのあからさまな「ひとんちの畑」感と、「ぽつ」って感じの存在感がおかしくて、笑えて仕方がなかった。

 

不破の関資料館。

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ここもなんとなくこの赤地に白抜きの「壬申の乱」ののぼりが笑えてしまった。

この資料館も先ほどの観光用マップもそうなんだけど、アピールしている層が謎というか、イラストの絵柄が今風で解説の方向性が全体的にゲスい。

いろいろ誤解を生みそうではあったけど、私は案外嫌いじゃないですそういうの。

資料館内の解説のパネル類、おもしろかったけど撮影禁止だったので残念だ。

 

関の藤川。

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壬申の乱ではこの川を挟んで大海人軍と大友軍が戦ったそうだ。

 

体力的に足を延ばせなかったけど、近くには「黒血川」という川もある。

激戦で兵の血が川底の石を黒く染めたとか...この時代の兵は何のために、何を思って戦っていたのかな、などと考えてしまった。

 

藤下の若宮八幡宮

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まず驚いたのは、藤古川を挟んだ東西に大海人、大友を祀った神社があり、現在もそれぞれの集落で信仰されているということ。

私にはすごい衝撃だったんだけど、友人に話したところ「神社ってそんなもんでしょ」と言っていたので、根無し草のような私と違い一つの土地に長く生きている人たちにとっては珍しい話ではないのかもしれない。

ここ若宮八幡宮は川の西側にあり、大友皇子が祀られている。

私は神社が好きでこれまでいろいろな神社を訪れたけど、受ける感覚が神社に寄ってさまざまで、有名な神社だから良いとか小さい神社だからそうでもないというものではなかった。

感覚、とか言い出したらなんかスピリチュアル的なあやしさがあるけど、要はただ好きの度合いやどう好きかってことを表現できる語彙がないだけです。

若宮八幡宮はかなり印象に残るよい神社だった。

歴史的背景を抜きにしてもここを訪れることができて本当によかったと感じた。

 

こちらが川の東側、井上神社。

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大海人皇子を祀っている神社。

こちらの方が境内が整備されていると感じたけど、若宮八幡宮とはずいぶん雰囲気が違ったように思う。

 

史跡めぐりはここまでだけど、話は変わって私は子供の頃から、高速道路や新幹線の車窓から見える小さな集落とか、田のあぜ道とか、そういうものが妙に気になるところがあった。

何度もそばを通過し、行こうと思えば行けない場所ではないけれど、おそらく生きている間に実際に行くことはないであろう場所のことを思うと、何とも言えない気持ちになる。

この町で史跡めぐりをしていて、あ、こういうところなんだ、と思った。

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伝わりにくいけど、左手が新幹線の線路、右手が高速道路だ。

私は今、あの「車窓から見える、絶対に訪れることはないであろう場所」にいるんだと思うと、子供のころからの気がかりがひとつ解決したような、妙な満足感があった。

なかなかおもしろい体験だった。

 

旅の記録、もっと細かく書きたかったところだけど、さすがにそろそろ一度書き終えたい。

加筆修正するかもしれない。と言ってしたためしはないけれど。

 

こんなに楽しいってことがあるのかというくらいすべての行程が楽しい旅だった。

私は幸せだ。

この記録を読み返して何度でも旅しよう。

 

おわり