関西の旅 7
4日目。
一人に戻った私はまた誰のことも付き合わせるわけにいかない行程の旅を再開。
関西圏の一日フリー乗車券を購入して、あちこち乗り降りしながら宿泊する滋賀県まで移動することにした。
若いころから数年前までずっと源平合戦のあたりの歴史がとても好きで、当時からゆかりの地めぐりの願望は強く鎌倉や平泉は何度も訪れていたけど、数年前まで一人での遠出は考えられず兵庫県やそれより西の地を訪れることは自分の中ではまったく現実的ではなかった。
それがこんな風に訪れることができるようになった今、当時のような歴史への興味がなくなってしまったのは皮肉だけど、当時とても来たかったんだよな、という思いでこの日はいくつかの場所を巡った。
前日までと打って変わって良い天気で、ずっと持ち歩いていた日よけのためのつばの広い帽子も役立ってよかった。
敦盛塚。
歴史が好きとか言ってもしょせん浅い人間なので興味の理由が美少年だからとかそんなのも少なくなく、平敦盛は当然興味深い人物である。
平家物語の「敦盛最期」、いいよねえ敦盛のプライド高そうな感じ。
あと言及を避けるわけにいかないので言いますけど「遙かなる時空の中で3」を少し前にやり直して、乙女ゲーで推しキャラがころころ変わってしまう私、今は完全に敦盛だった…
須磨浦公園でロープウェイに乗ってしまおうかな、と思ったら朝早すぎて営業時間外だった。
このあたりも前日まで訪れるかどうか決めてもいなかったので当然下調べもなく、Googleマップを眺めながら歩いていると「逆落とし」と書かれたポイントがあったので行ってみることに…
が、経路を検索すると、進むべきルートはこれだ。
傾斜20%…
振り返った景色はとても美しいけれど。
坂を上りきると内裏跡公園という何やらすごいネーミングの公園があった。
安徳帝内裏跡伝説地とのこと。
ハッ 今になって気づいたけど私この旅で平城京藤原京とこの後難波宮跡も訪れるんだけど、そう考えたらここも宮城の跡めぐりのひとつになるのでは…!
旅が終わって一ヶ月も経つのにまだおもしろい発見があるとはね。
Googleマップに「逆落とし」とあるポイント、現地では特に何の案内もなく、とにかく地図の経路通りに進んでいくと視界が開けてそれらしい場所に出た。
確かに崖だった…
ここを馬で駆け下りたのだろうか。
このあたりの歴史が好きだったと言いながら戦の詳細はよく知らないので、一の谷もよく目にする地名だけど逆落としといえば鵯越のイメージがあり、どういうことなんだろうと思ったけどどうやら逆落としにはどちらの説もあるらしい。
それどころか逆落とし自体創作の可能性もあるとのことだけど、そんなのは歴史的エピソードにはよくあることなのでがっかりとかはない。
というか地元の人、もしかしてここを自転車で上り下りしてるんじゃないだろうか。
現代の逆落としでは…
途中からうすうすそんな気はしていたけどこの崖を降りると下の道につながっていて、坂を上り下りしなくてもこの場所には来られた。Googleマップ、たまにそういう案内してくるところあるよね。
一の谷戦の濱碑。
本当に、古文や歴史小説で見たあの場所なんですねえ。
続いて少し前に友人が訪れていて写真を見せてもらってから行ってみたいと思っていた須磨寺を訪れた。
源平の庭、これが見たかったのだ。
敦盛を呼び止める熊谷直実。良い場面が切り取られているなあ。
境内に、ボタンを押していくと「青葉の笛」が演奏できる装置があって、通りかかる人が次々に奏でていくのであたりはちょっと物悲しい空気が流れていた。
宝物殿には青葉の笛が何気なく展示されていて目を疑った。
時間と体力の関係でざっと見て戻ってしまい、敦盛の首塚には気づかなかったのが悔やまれる。
それから須磨の海に出た。
須磨といえば私は源氏物語くらいでしか知らなかったのでなんとなく寂しい光景をイメージしていたんだけど、実際の須磨は夏は若者がたくさん訪れそうなどちらかというと賑やかな場所だった。
一体何百年前の話をしているのだ私は。
歩き疲れたこともあり、海を眺めながらしばらく休憩した。
空は晴れていて明るく、まるで夏みたいだった。
つづく