奈良のこと 1

奈良に取り憑かれている。

 寝ても覚めても奈良のことを考えているし、もう街で予備校の「公務員試験なら〇〇」とかいうポスターが視界に入るたび「奈良!?」と足を止める始末だ。

熱しやすく冷めやすい自分の性質は把握していても、今回少々度が過ぎているような気もするのだけど、こうなるのも宿命だったのかな…なんて、遅い奈良デビューで昨年末に初めて訪れた時、もうすぐにわかっちゃったんだよね、あ、私はここに来たかったんだ…と。

最近になってあちこち出かけるようにようになって、憧れの強すぎた京都にも去年やっと行くことができた。

どこに出かけても毎回とても楽しいし感動があるけど、そんなんじゃなく私はほんとはずっと奈良に行きたかったみたいだ。

歴史も古文も好きで憧れの場所だったって意味では京都と同じはずなのに、この特別感の理由は今言語化できない。

旅の行程を文章化しているうちに何か気づくかもしれない。そうなったらいいと思う。

 

ほんとだったら前回の初奈良の感動から振り返りたいところだけど今回感動も上書きされてしまった感があるので2度目の奈良旅の足跡をまとめます。

 

1日目。

前回は普通電車で10時間くらいかけて行ったけど、今回は新幹線移動だった。

ツアーで時間が自由にならないので、一日目は東京を昼頃出発するゆったりの予定ではあったんだけど、なんとトラブルで新幹線が止まってしまった。でもなんだかそんなにせかせかした気持ちでもなかった。

停車中の車内で同行の妹に恩田陸の「まひるの月を追いかけて」を読ませ、自分は永井路子さんの「美貌の女帝」を読んでいた。

まひるの〜」は奈良を旅する話、「美貌の女帝」は飛鳥、奈良時代元正天皇の話。

 

ところで前回はJR奈良駅夜着いて、翌日は飛鳥の方に移動する予定になってたので着いたその足で真っ暗な中奈良公園の方に向かい、夜だけど、まあ普通の有名観光地を想像していた私は、ほとんど歩いている人がいないこと、あまりにも辺りが暗いことに戸惑いつつ、暗闇にぼうっと浮かぶ塔や門、驚くほど星が輝く夜空を独り占めしている非日常感を味わうという夢のような体験をしていた。だって、東京で鬱々と仕事してる日常の地続きにこんな時間と空間ってありますか?

大仏もお堂も鹿も何も見ることができなかったので、次回は是非明るい時間に訪れたい、という願望と同程度に、いやそれ上回る勢いでまた「あれ」を体験したい。それくらい強烈な体験だった。

妹と事前に相談したもののまったく行程を決められず、結局奈良到着が夕方になってしまったのをいいことにまた奈良公園方面から始めることにした。

が、偶然訪れたこの日、なら瑠璃絵というイベント期間で、夜でも暗くも人がいなくもなかったんだけど、これはこれでとても良かったんです。それは追い追い。

 

f:id:wa_ta:20190217205058j:image

 

前回闇の中で見た興福寺

 

f:id:wa_ta:20190217205646j:image

 

 奈良国立博物館

建物がすてきだ。いつかは中も見たい。

 

東大寺の方面に道を入ると、当然のことながら観光客が道をびっしり埋めていて、これが普段の奈良なんだなと思った。

 

そして、鹿!!!!

 

f:id:wa_ta:20190217212401j:image

 

前回も、実は見たといえば見たんです、暗闇の中に「公園の中のあれ、木の切り株かな…いや、動いた? 鹿か!?」という状態で…

それが、突然目の前に有無を言わさぬ鹿ですよ。写真でも映像でもよく見るはずなのに、なんでリアル鹿はあんなにインパクトがあるのだろう。

2日目、3日目も全然別のエリアを歩きながら、時々鹿のことを考えている自分がいた。謎である。

 

f:id:wa_ta:20190217211045j:image

 

前回「何か黒く、巨大な気配」と感じるだけだった南大門。

金剛力士像がちょっと現実離れしすぎていて衝撃だった、まじまじ眺めてもスクリーンに投影してるんじゃないかと疑ってしまった。

 

f:id:wa_ta:20190217211354j:image

 

鏡池に映る美しい大仏殿を横目に、なんと今回も大仏は見合わせ、眺めがいいと噂の二月堂へ向かった。

 

f:id:wa_ta:20190217211759j:image

f:id:wa_ta:20190217211831j:image

f:id:wa_ta:20190217211904j:image

f:id:wa_ta:20190217211930j:image

 

あまり天気が良くなかったので夕日が沈むところは見られなかったけどとても気持ちのいい場所だった。

それに、奈良の風景にはなぜか雲が似合う気がする。

近くに住んでいたらいろんな天気の日のいろんな時間帯にここから空と街を眺めたいと思う。なんと24時間開放されているらしいので…

 

そこから春日大社へ向かった。

その道中も鹿!!!

 

f:id:wa_ta:20190217212308j:image

f:id:wa_ta:20190217213411j:image

f:id:wa_ta:20190217213438j:image

 

なかなかの遭遇率なのでいい加減慣れても良さそうなものを、鹿を見るたび私は「鹿!!!」と言って写真を撮っていた。 たぶん次回もそうなると思う。

 

 f:id:wa_ta:20190217213901j:image

f:id:wa_ta:20190217214217j:image

 

春日大社には表参道からではなく横っちょの方から入ってしまったので、正面がどこなのかもよくわからず、暗いしどうせ参拝できないし、じゃ来た道引き返しますか、となったんだけど、この回廊? の雰囲気がよく、まあ端まで歩いてから帰るか、と思ったのが運命の分かれ道だったのです…

回廊の端にたどり着くまで何の気配もなかったというのに、角を曲がったところ、突然のイベント感。例のなら瑠璃絵でした。

 

f:id:wa_ta:20190217214716j:image

f:id:wa_ta:20190217214749j:image

f:id:wa_ta:20190217214816j:image

 

これを見ずに帰る可能性があったことを考えるとあの時回廊の端を見てみようと思った閃きは神の思し召しではないか。

 

f:id:wa_ta:20190217215505j:image

 

参道ずっと見たこともないようなさまざまなイルミネーションがあった。

イベントや人が多いところが苦手な私も、東京から遠く離れた奈良にいて、夜で、なんだかよくわからないきらきらぴかぴかしたものを眺めていることもまたすごく非日常的で、夢みたいで、とても楽しかった。

 

f:id:wa_ta:20190217215606j:image

 

猿沢池を眺めてふたたび興福寺

 

f:id:wa_ta:20190217215736j:image

f:id:wa_ta:20190217215803j:image

 

せっかく国宝館も夜間公開していたのに立ち寄らなかった。中金堂も見られていない。

月がきれいな夜だった。

 

つづく